
過去の離職率と業種別・男女別の離職率の平均を確認しよう
現在、どの業界においても人材不足は問題視されており、年々状況は悪化していく一方です。
人材不足の大きな原因となっている離職。
企業の経営者や、人事担当者にとって、国内の平均的な離職率は無関心ではいられないかと思います。
自社の離職率が平均と比べてどの程度の水準なのかがわかれば、離職を防ぐ対策にもつながって経営改善に役立ちます。
そうした離職率の平均を知らないままにしていると、従業員に関する問題点を見落とす危険性もあります。
今回の記事では国内の主要産業全体の平均的な離職率を取り上げ、業種別や男女別の離職率の傾向を紹介していきます。
目次[非表示]
近年の離職率の平均
全国の主要産業に関する離職率の平均は、厚生労働省が毎年行っている雇用動向調査の報告書に詳しく記載されています。
この調査では産業全体を16種類に分類し、それらに所属する事務所から無作為に抽出し労働状況の確認を行っています。
2017年の常用労働者数が合計4,941万人で、1年間の離職者数は735万人に達しました。従って2017年の平均離職率は14.9%ということになり、およそ7人に1人がこの1年間に離職している計算です。
常用労働者数 | 離職者 | 平均離職率 |
4,941万人 | 735万人 | 14.9% |
この14.9%という数字を「高いと見るか」「低いと見るか」は、これまでの推移や業種別、男女別を知っているか知らないかで変わってきます。
過去の離職率推移を知っておけば全体の傾向が見えてくるため、自社の現状分析にも役立てられるものです。
ここからは10年間の離職率の推移や、業種別、男女別の離職率を紹介していきます。
過去10年の離職率の平均
過去10年間の雇用動向調査によると、離職率の平均値は最大16.4%、最も低い年でも14.4%と大幅には変わっていないことがわかります。
離職率はその年の経済状況にも大きく左右されるため年ごとに上下していますが、過去10年間に関してはそれほど大きな変動が見られません。
過去10年間の離職率は平均15.1%で、2017年(平成29年)の平均離職率14.9%に近い数字です。
従って最新の平均離職率も際立って高い数字というわけではなく、同じくらいの離職者数は毎年出ている計算になります。
過去10年間で16.4%という最も高い離職率を記録したのは2009年(平成21年)で、この年は前年の14.6%から1.8ポイント増えています。
これは前年9月のリーマンショックの影響で国内企業の経営にも大きな悪影響が及び、結果として離職者数増加につながったものと考えられます。
翌年には離職率の平均値も14.5%に下がり、東日本大震災が発生した2011年(平成23年)も含めて3年間は14%台で推移しています。
今後もリーマンショックのような出来事がない限り、平均して15%前後という離職率の平均値が大きく変動することは考えにくいと言えるでしょう。
業種別の離職率の現状
先ほど紹介した離職率は、すべての産業を平均した離職率であって、実際には業種によって数字が大きく異なります。
雇用動向調査には16種類に分類された産業別の離職率も掲載されており、自社が属する業種の平均的な離職率を知る手がかりとなります。
どの業界においても共通して離職の原因としてよくあるものは、所定外労働時間、賃金、人間関係、労働環境などです。
しかし、それ以外にも業界特有の離職の原因も存在しているためほかの業界の対策が当てはまらないこともあるので注意が必要です。
離職率が高い宿泊業・飲食サービス業
平成29年の調査によると、離職率が最も高い業種は宿泊業・飲食サービス業の30.0%でした。
宿泊・飲食サービス業の離職の大きな原因として、所定外労働時間、労働環境、給与の三つが挙げられています。
その理由としてIT化の恩恵が受けづらい労働集約型産業であることが挙げられ、現在最も対策を必要としている業界となっています。
これに次ぐ生活関連サービス業・娯楽業の22.1%も高い割合となっています。
この産業は離職率が入職率(※1)を上回っており、ほかで入職率を上回っている金融業、保険業と複合サービス事業の二つしかありません。
※1 入職率(%)=入植者数÷常用労働者数×100
廃棄物処理業や自動車整備業など、「ほかに分類されないサービス業」の離職率は3番目に高い18.1%です。
これらの3種類のサービス業は過去の雇用動向調査を見ても離職率が高く、ワースト3としてほぼ定着された業界となっています。
同じ「サービス」がつく業種でも複合サービス事業は離職率が7.7%で16業種の中でも2番目に低い水準ですが、これは協同組合などが該当するため、ほかのサービス業とは違った業種となっています。
離職率の低い業界は専門職?
離職率が低い業種は電気ガスなどのインフラ系、建設業、製造業などの専門職が10%を下回っていることがグラフから見ることができます。
特に離職率の低いインフラ系では福利厚生が充実しているほか、賃金も比較的高いこと、スキルアップ制度などが定着率の理由として挙げられます。
しかし、最も大きな要因として受注元が国や政府ということが多く、安定して働くことができることが挙げられ、ほかの業種からはあまり参考にはならない業種となっています。
また、建設業では、離職率は低いものの、業界全体から見ても若い人材が少なく、29歳以下の労働者の割合が10%以下となっており、人材不足が深刻化している傾向があります。
男女別の離職率の現状
男女別の離職率には大幅な差が見られ、傾向としては男性より女性の方が離職率は高くなっているのが特徴です。
平成29年の雇用動向調査では男性の離職率は13%にとどまり、全体の平均14.9%を下回る水準でした。
一方で女性の離職率は17.2%に達し、男性よりも4ポイント以上高く全体の平均を2ポイントあまり上回る結果となっています。
この原因として出産や育児など、職場に関する問題以外のことで仕事を退職しなければならない場合があることが挙げられます。
しかし、5年前まで女性の離職率は18.7%だったものが、2017年は17.2%に下がり、男女間の離職率の差はわずかながら縮小傾向にあることもわかります。
その背景には、女性が働きやすい職場環境の整備に取り組んでいる企業が増えていることがあります。
企業側で育児休暇や育児をサポートするための時短勤務や、長期的な産休、育児休暇など女性の活躍を支援する制度を打ち出すようになった結果、女性が働く環境の改善が離職率の低下につながっているのです。
女性の社会進出が進んでいると言われていますが、現在の女性の労働人口は全体の43.7%と男性よりも低いものとなっています。
そのため、まだ新規の労働者を獲得するチャンスとも言えるでしょう。
人員不足の対策として今後企業は、女性が働き続けられるような環境の整備に取り組むことも重要となります。
まとめ
人材不足は年々深刻化していますが、離職率に関しての変化はあまり見られません。
人材が離れてしまうと残った人材の業務増加や、モチベーションの低下など、さらに離職者を増やしてしまう恐れもあります。過去の離職の傾向を参考にして、それぞれの職場に合った離職対策を打つことが今後重要となるでしょう。